時代に咲いた花 2019.11

テレサ・テン(上)

80年代の日本歌謡界でミリオンセラーを連発
「アジアの歌姫」と呼ばれ一世を風靡した

 アジアの歌姫──テレサ・テン。『つぐない』『時の流れに身をまかせ』など、80年代の日本で数々のヒット曲を生み、台湾、香港、東南アジア各国の華人界も席巻しました。作品の累計売上は1億枚を優に超え、没後20年以上経た今でも、国境を越えて愛され続けています。
 しかし、42 歳の若さで幕を閉じたスターの人生は、決して華やかなだけのものではなく、孤独や人知れぬ苦悩と闘い続けた生涯でもありました。人の心をつかむ愛らしくも憂いのある歌声。そこにこめた熱い想いとは……。
 1953年1月29日、テレサ・テン、本名・鄧麗筠は台湾の雲林県褒忠郷龍岩村に生まれました。父は中国本土での内戦に敗れ、蒋介石とともに台湾に逃れてきた国民党の職業軍人で、母も大陸生まれのいわゆる「外省人」一家でした。
 言語も習慣も異なる異国の地で一から生活を築くのは容易でなく、父は退役し商売を始めたものの苦労続きで、職を求めて住居を転々としました。それでも麗筠は3人の男子に続いて生まれた女の子(のちに弟も誕生)だけに、両親からことのほか可愛がられ、幼い頃から軍の音楽隊の演奏を見に連れて行ってもらったり、中国地方劇の歌曲を
好んだ母の影響で、大陸の伝統音楽に親しんだりしていました。
 中華民国の支配に変わっても、日本統治時代の影響が色濃く残る当時の台湾では、日本の歌謡曲が人気で、美空ひばりの『りんご追分』をはじめ日本の流行歌がいつもラジオで流れていました。中国語のカバー曲も多く、歌が大好きな麗筠はすぐに覚えてしまうのでした。

※続きは2019年11月号本誌にて。
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