時代に咲いた花 2019.09

渡辺和子(上)

苦しみを喜んで受け入れ、苦難を感謝に変えた
ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』の著者

 ノートルダム清心学園理事長を務め、ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』で知られる修道女の渡辺和子。稀有な人生を歩んだ彼女の言葉には、苦悩と葛藤を知る者にしか語れない愛と示唆があり、多くの人を慰め、生きる希望を与えています。
 〈一生の終わりに残るものは、自分が集めたものではなく、自分が与えたもの〉────89年の生涯で彼女が残したものとは……。
 昭和2(1927)年2月11日、北海道・旭川で和子は誕生します。4人きょうだいの末っ子で、陸軍中将の父・渡辺錠太郎52歳、母・すゞ44歳と、遅くに授かったため、目に入れても痛くないほど可愛がられました。
 旭川の第七師団長を3年間務めたのち、東京に呼び戻された錠太郎は、陸軍大将に昇格すると、昭和10(35)年には軍隊教育機関の最高責任者である教育総監に就任します。それは火中の栗を拾う覚悟の上でした。
 その頃、日本は満州国を認めない国際連盟から脱退し、国際的な孤立を深めていました。陸軍内部では天皇親政を唱え国家革新を目指す「皇道派」と、政党・財閥・官僚と協調して国家総動員体制を進めようとする「統制派」が激しく対立。中立の立場で軍紀の粛正を図ろうとした錠太郎に、血気盛んな青年将校たちの憎悪が向けられるのです。
 荻窪の渡辺邸には警護の憲兵が常駐し、子供心にもただならぬ雰囲気を感じていた和子でしたが、昭和11(1936)年2月26日、とうとう惨劇が起きてしまいます。

※続きは2019年9月号本誌にて。
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