時代に咲いた花 2018.09

マリア・フォン・トラップ(上)

『サウンド・オブ・ミュージック』のヒロイン
一人ぼっちの孤児から7人の子の「お母さん」に

 1965年公開のミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』。アルプスを背景に、戦争の時代を生きた家族の愛と結束、歌う喜びを描いた不朽の名作で、「ド・レ・ミの歌」「エーデルワイス」など、映画を超えて愛される名歌を生みました。
 第二次世界大戦前夜のオーストリア、厳格なトラップ家にやってきた天真爛漫な家庭教師マリア。アカデミー賞女優のジュリー・アンドリュースが演じたヒロインのモデルとなった女性がマリア・フォン・トラップです。自伝をもとに製作された舞台や映画は大ヒットし、一躍有名になりますが、彼女が実際に歩んだ道は、物語以上に波乱万丈でした。
 マリア・アウグスタ・クチェラ、後にトラップ家の一員となるオーストリア人女性の誕生は、一風変わっていました。1905年1月25日から翌日にかけての夜中、母の故郷チロルから父が待つウィーンに向かう列車の中で、車掌の手で取り上げられたのです。
 この“せっかち”な娘を待ち受けていたのは過酷な運命でした。わずか2歳で母を肺炎で失い、父の手で親戚に預けられ、大人ばかりに囲まれた寂しい幼少期を過ごします。唯一の楽しみは空想で、頭の中に理想の大家族を作り、賑やかな暮らしを思い描いて楽しむのでした。また、敬虔なクリスチャンであった養母に信仰心を育てられ、神への愛を深めていきます。
 父は長年、異国を放浪し、家に戻ってきたころには14カ国語を操れるようになっていました。本と楽器をこよなく愛し、幼い娘にフランス語やラテン語を手ほどきし、楽器や歌を教えたり、世界の美しさや面白さを見せようと旅に連れ出したりしました。
ところが、そんな父もマリアが9歳のときに亡くなり、一人ぼっちになってしまうのです。

※続きは2018年9月号本誌にて。
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