時代に咲いた花 2018.05

エリザベス・ブラックウェル(上)

差別と困難を乗り越え世界初の女性医師が誕生
決意させたのはある女性患者との出会いだった

 かつて医師は男性の仕事でした。女性が正規の医学教育を受け、医師の資格を得ることなど誰も想像できなかった時代に、信念を貫いて夢を叶えたイギリス人女性がいます。
 世界初の女性医師となったエリザベス・ブラックウェル──「医師は女性の天職である」と確信し、閉ざされていた医学・医療の重い扉を開くことに果敢に挑戦したパイオニアは、後に続く女性たちに勇気と希望を与えました。
 1821年、エリザベスはイギリス西海岸の港湾都市ブリストルで製糖工場を営む家庭に、9人きょうだいの3女として誕生しました。両親は熱心なクエーカー教徒で、とりわけ父のサミュエル・ブラックウェルは進歩的な考えを持ち、それは子供たちの信仰と教育に強く反映されました。
 人はみな平等であり、黒人も白人も、金持ちも貧乏人も、子供も女性も等しく権利がある──そう固く信じていた父は、家庭で男女の別なく教育を施しました。良妻賢母が女性の理想とされる時代、サミュエルのやり方に苦言を呈する人もいましたが、おかげでブラックウェル家の娘たちは息子たちに負けない大きな野心を持ち、探究心を燃やすようになるのです。
 エリザベスは人一倍意思が強く、好奇心も旺盛でした。気になることがあれば試さずにはいられず、10歳のころ、どうすれば体が強くなるだろうかと、床板の上にじかに寝てみたり、一日中何も食べずに過ごしてみたりと、鍛錬方法を考えては実行してみたといいます。
 そのころイギリスは産業革命のさなかにあり、手工業に代わる機械の発明、さらに蒸気機関の出現により生産技術の大変革が起きていました。産業資本家が社会的勢力を拡大するいっぽう、老舗の機屋は次々と店を閉じ、社会構造が根底から覆されつつありました。資本主義が拡大していく、まさに歴史の過渡期です。
 

※続きは2018年5月号本誌にて。
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