時代に咲いた花 2017.09

パール・バック(上)

歴史的転換期を迎えた中国で半生を過ごし
小説『大地』で女性初のノーベル文学賞を受賞

 女性として初めてノーベル文学賞を受賞したアメリカ人女性パール・バック。19世紀末から20世紀初頭の激動期の中国(清)で半生を送り、「中国農民生活に対する豊かで画期的な描写」が評価された代表作『大地』をはじめ、自伝的傑作を通じて新しい東洋像を描き出しました。
 その情熱は社会活動にも注がれ、書斎を飛び出して人種差別の撤廃や、人間の幸福と平和の実現、男女同権を求め、積極的に戦い続けました。東洋と西洋の両方を「母国」とする異色の生い立ち、そして障害児の母となる運命を背負う波乱の人生。彼女がその目で見て、感じた世界とは、果たしてどんなものだったのでしょう。
 1892年6月26日、パール・バックはサイデンストリッカー家の娘としてアメリカのウェスト・バージニア州ヒルスバローで誕生しました。キリスト教宣教師の父アブサロムは妻ケアリーと共に海外布教のため10年前から中国に渡っていて、パールは両親が10年に一度の休暇年を利用した帰郷中に生まれ、生後3カ月で母に抱かれて海を渡り、揚子江のほとりの鎮江で育ちました。家族以外まわりに白人はおらず、中国人に囲まれた環境で彼女が最初にしゃべり始めたのは中国語でした。
 信仰一筋の父は、身の危険を顧みず中国の奥地を巡回し、家庭を留守にしがちでした。そのため、子育ては母ケアリーと中国人の老婢ワンに委ねられ、この2人がパールの人格形成に大きな影響を及ぼします。
 母は7人の子供のうち4人を亡くす不幸に耐えながら、異国の地で懸命に生きた、教養豊かな明るい人で、子供たちの家庭教師をしながら、アメリカ人として祖国の伝統と愛国心を教えました。荒野を切り拓いた祖父母らの逞しさ、イギリスと戦った独立戦争、黒人奴隷を解放した南北戦争……、母が繰り返し語るこれらの話は、自由と独立の大切さを幼い心に刻みつけました。

※続きは2017年9月号本誌にて。
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