時代に咲いた花 2015.7

美空ひばり(下)

家庭の幸せに憧れながら、芸に生きる道を選択
弟2人の不祥事と早逝、絶対的な母の死に見舞われ
48歳で難病にかかるも、東京ドームで奇跡の復活

生まれて初めて母親に
逆らい、小林旭と結婚

 歌謡界に君臨した若き女王・美空ひばり。しかし、絶大な人気の裏には私生活の犠牲がありました。常に人目にさらされ、自由な時間も空間もない商品化された生活。「スターと呼ばれたとき、家族の団らんも気ままな旅も、初恋も消し飛んで、ガンジガラメの明け暮れがはじまります」――ただ歌が好きで、聴いてもらえることが嬉しくて仕方なかったのに、いつしか自分を見失っていました。スケジュールは数年先まで埋まり、自分勝手は許されません。初めて抱いた恋心もゴシップのネタにされ、儚く破れます。
 「三人娘」の江利チエミ、雪村いづみが相次いで結婚し、焦りと孤独で胸がいっぱいでした。そこに現れたのが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの日活の小林旭でした。「映画スターベストテン」の男優、女優、1位同士の対談で初対面した2人は、すぐに意気投合。男らしい美丈夫で、大きな夢を語る旭の豪快さに惹かれ、ひばりは惚れてしまったのです。悪い噂を耳にしていた母・喜美枝は猛反対しましたが、障害が多いほど恋の炎は燃え上がるもの。これまで親に逆らったことのない娘の、初めての抵抗でした。
 昭和37(1962)年11月、東京の日活国際ホテルで盛大な結婚式が挙げられ、芸能界の二大スターの結婚に日本中が沸き立ちました。ひばり25歳、旭24歳。

新宿コマで長期公演
あたしは芸に生きる

 ところが、愛は幻でした。新婚旅行の旅先ですでに不協和音が鳴り始め、ささいなことでしばしば口論になりました。よい妻を演じようと張り切り、夫の希望通り仕事も大幅に減らすと、今度は喜美枝が気に入りません。「加藤和枝は嫁にやったけど、美空ひばりまで嫁にやった覚えはない」と豪語し、夫婦の間に割って入ったことも関係を難しくしました。
 何より旭はひばりの真価を十分に理解していませんでした。男の面子もあったのでしょう。ひばりもまた、一介の主婦に甘んじることはできなかったのです。囲おうとすればするほど、羽を奪われた鳥のように苦しみ、飛び立とうともがくのでした。
 再び芸の道へ返り咲かせようと奔走したのは、他でもない母でした。喜美枝は新機軸を打ち出そうと新宿コマ劇場での長期公演を企画し、作家の川口松太郎に脚本を依頼。川口の私邸まで押しかけ、「親子が死ぬか生きるかの瀬戸際」と直談判して口説き落としたといいます。・・・

※続きは2015年7月号本誌にて。
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