友好の橋 2019.05

英国
United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland

源氏物語を翻訳、アーサー・ウェイリー
欧米のインテリ層が大絶賛

 日本文学研究者、翻訳者である故ドナルド・キーン博士が日本に興味を持ったきっかけは、紫式部の『源氏物語』だったと言います。キーン氏はその最初の印象を、次のように語っています。「やがて私は源氏物語に心を奪われてしまった。アーサー・ウェイリーの翻訳は夢のように魅惑的で、どこか遠くの美しい世界を華やかに描き出していた」。

★大英博物館で日本文化に出会う

 翻訳家アーサー・ウェイリーはイギリスのロンドンでユダヤ系の裕福な家庭に生まれ、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジへ進み、ギリシャ・ラテン語を専攻。目の病からさらなる学業を断念し、大英博物館で働いたことが源氏物語との出会いへと導きました。
 当時のウェイリーの履歴書には、なんとフランス語、ドイツ語、スペイン語を自由に話し、イタリア語、オランダ語、ポルトガル語が理解でき、ラテン語、ギリシャ語が苦労なく読め、ヘブライ語、サンスクリット語の知識もあると書かれており、すでに語学の天才であったことを物語っています。博物館ではアジアの美術品の目録を作成する仕事に従事。こうして日本の文化遺産に触れていく過程で源氏物語と出会ったようです。
 1921年、ウェイリーの翻訳した『源氏物語第1巻』が世に出ると、欧米のインテリ層を中心に大きなインパクトを与え、大絶賛されました。ウェイリーは大英博物館の近くにあるブルームズベリーのゴードンスクエアに住んでおり、ここに住む人たちは、経済学者のケインズや女流作家のバージニア・ウルフらも名を連ねる「ブルームズベリー・グループ」と言われるイギリス最高の知識人集団をなしていました。ウェイリーは彼らとの深い交流があり、彼らはこの東洋の新しい文学作品に度肝を抜かれたのでした。

★数々の訳本で今なお読者を魅了

 ウェイリーは33年までに源氏物語全訳6冊を出版。他にも『日本能楽集』『世阿弥論』『枕草子』などの翻訳本を発表しています。
 与謝野晶子、谷崎潤一郎、平成に入っても、瀬戸内寂聴、林望など数々の文学者が『源氏物語』の訳本を出し、今なお読者を魅了しています。英訳本も、ウェイリーに続き、エドワード・サイデンステッカーやロイヤル・タイラーなど、多く出ています。2018年の時点で翻訳された言語は33カ国語にも上ると言われ、千年の時を経てもなおその輝きを失わず、世界中の人々に読まれるとは、流石の紫式部も想像だにしなかったでしょう。

※詳細は2019年5月号本誌にて。
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