座標軸 2019.11

向野幾世 奈良大学元講師

二上山の思い出

向野幾世 奈良大学元講師

麗かに且つ爽かに冬立ちぬ
         相生垣瓜人

 いつだったか、エジプトのミイラのように白い布でぐるぐる巻きされた仏様たちが、興福寺から運び出されるのを目にした。「お寺の修復再建のため、仏様も全国の博物館や美術館に出張する」と聞いたことがある。
 仏様も出稼ぎに行かれるのかしらと不遜にも思ったが、もちろんそうではなかった。一昨年の秋、奈良大学の市民講座で学んだことには、仏様たちを未来に受け渡すために健康診断をするという。
 2009年、九州国立博物館で特別展が開催された際、文化財用の大型CTスキャナーで仏様たちの内部構造が解析された由、その時、阿修羅像の欠損した右手は法具を手にしていたのではという推測は崩れ、正面で合掌していたことも分かった。天平の至宝阿修羅像の眉をひそめ遠くを見はるかすお顔のその手は、祈りと感謝の合掌であったのか。物言わぬ仏様の真実を知ってとても納得した。

※続きは2019年11月号本誌にて。
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