座標軸 2019.09

向野幾世 奈良大学元講師

老木に花の咲かんが如し

向野幾世 奈良大学元講師

 仲秋や月明かに人老いし  高浜虚子

 同窓会が鎌倉であった。“いざ鎌倉”とばかり7人の友が集まった。学生時代の専攻科は別々で、哲学、史学、教育と違ったが、同じ年に生まれている。「お元気でしたか」の挨拶もそこそこに「この頃は膝が痛くて」「腰が重い」「肩がだるくて」と話が盛りあがる。ひとしきり身体の全ての関節名が出たかと思うや、続いて友のこと。だれそれが「療養中」「入院中」「施設入所中」と事情は異なるが、老いの消息には違いない。とうとう鬼籍に入った友のこと等も。
 「そういえば」と、また盛りあがる話は家人のこと。「このところ身体の調子が悪く」「もの忘れもひどく」「今日の出席はショートステイにお願いして……」と。家人のいる人、いない人、それぞれの身辺の由なし事あれこれ。家人のことならばと私も話に加わる。4歳6歳の孫から「おばあちゃん、どうして首の所にレールがあるの」「おばあちゃんはいつ大きくなるの」「いつ死ぬの」と幼き者が心のままにする自然の風体とはいえ厳しいものよと。
 結局一同が口にしたのは「老」のことであった。年をとってくることは余りうれしいことではない。今まで普通にできていたことがだんだんできなくなる。実にもどかしいことばかりだと、話がつきることのなき同窓会になった。

※続きは2019年9月号本誌にて。
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