座標軸 2019.07

向野幾世 奈良大学元講師

「ひとりぼっちゼロ」をめざして

向野幾世 奈良大学元講師

 凌霄や問ふべくもなき門つづき 中村汀女
 のうぜんに風少しある土用かな 内山紀美女

 振り返って数えると20数年前になる。亡夫と共に地域の自治会長の役目を受けたことがある。当時108世帯。除夜の鐘と同じだったので覚えている。月1回ほどの組長会に、庭の花一輪添えることを心掛けていた。それは会話が弾むためのちょっとした仕掛けでもあった。季節を感じたり、嗅いだり見たりするうちに心がほぐれていくと気づいたからだ。
 ところが、7月という季節は庭に花が少ない。唯一玄関脇のパーゴラにからむ凌霄花だけが暑さにめげず咲いている。生け花には似合わないと知りつつテーブルに飾ったのだが、会合の途中、橙黄色のらっぱ形の花の中から蟻が這い出して来て、ちょっとした騒ぎになった。
 今思うと、もうあの頃から地域の関係性が希薄になりかけていたのだろうか。何とか孤立を防ぎ、つながりを保ちたいと思っていた。当時は子供会も老人会も健在だった。しかし、いつの間にか子供会も先細り、老人会も解散してしまった。
 

※続きは2019年7月号本誌にて。
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