座標軸 2019.03

向野幾世 奈良大学元講師

上を向いて歩こう

   卒業といふ美しき別れかな  清崎敏郎

 雛鳥が巣立っていくことは親鳥にとってうれしくもあり寂しくもある。それにしてもあっという間の4年間だった。孫が広島から奈良の地に来て大学に入り、そしてもう飛び立って行くという。
 歳月の隔たりはあるものの母校を同じくする者としても“はなむけ”のことばをと思う。次に進む地は東京と聞いた。贈ることばとして「あどけない話」の詩の一片を届けよう。

   智恵子は東京に空が無いといふ
   ほんとの空が見たいといふ
   私は驚いて空を見る
   桜若葉の間に在るのは
   切っても切れない
   むかしなじみのきれいな空だ
   どんよりけむる地平のぼかしは
   うすもも色の朝のしめりだ
   智恵子は遠くを見ながら言ふ
   阿多多羅山の山の上に
   毎日出てゐる青い空が
   智恵子のほんとの空だといふ
   あどけない空の話である
          (高村光太郎)

※続きは2019年3月号本誌にて。
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