座標軸 2019.02

向野幾世 奈良大学元講師

芽ぶきの時を迎えて

 入学の子をもつ親の君と我  久米三汀

 春浅し空また月をそだてそめ 久保田万太郎

 庭の隅のいつものところに、待ち構えていたかのような蕗のとうのみどりを見つけた。小さな草の芽も萌えだしている。寒中よりまだ寒いといわれる2月にして、庭の表情はどこか春の息吹をととのえている。
 今年6歳になる孫娘は、この春の入学をひかえている。父は机を買って来た。ニトリの組み立て式の簡易な机である。工具が持ち出されるや4歳の弟は興味津々。父の作業の横を離れない。やがて組み立てられた机が南側の窓際に据え付けられた。
 はじめて自分の机に座った孫娘は、顔を押し付けたり、手のひらで机の上をなでたりと、「どうぞよろしく」の挨拶をしたのだろうか。弟は虎視眈々と座る機会を待っていたが、「これはお姉ちゃんの。あなたも一年生になったらね」と。いつもなら抵抗しそうなものだが、このたびはすごすごと諦めた。
 たかが机、されど机。机は人の心の「構え」をつくるのか。1年生になるという意識を身体ぐるみで覚えた6歳と、早く大きくなって自分も1年生になろうという気構えを4歳に与えていた。

※続きは2019年2月号本誌にて。
readlink

関連記事

カテゴリー

ページ上部へ戻る