座標軸 2018.09

向野幾世 奈良大学元講師

「ふたつよいこと さてないものよ」

 なにがなし たのしきこころ 九月来ぬ    日野草城

 新聞に「ラン活」という太字を見た。「婚活」「妊活」「就活」と何でも縮めて言うこの頃。それにしても「ラン活」とは何か。小学校入学を迎えた子にランドセルを用意する活動がそれだと知る。わが家にも来年入学を待つ孫がいる。そうだ「ラン活」をしなければ。もう一人の孫は大学卒業の年で「就活」中だし、そして私は「終活」中である。 
 50数年前、息子が小学校入学を迎えた時、それを機に家を建てた。生活費を切り詰め、ようやく土地を手に入れた。小・中学校に近く、最寄り駅に近く、買い物に便利で、望みは見晴らしの良い所と。そして今の高台の地に落ち着いた。賢治の『注文の多い料理店』ならぬこの土地は一つひとつの注文によく応えてくれていた。
 少なくとも私が若い日々はである。だが、この高台はゆるやかな坂道と階段を伴っていた。よいことづくめを望んでいたが、年を重ねると事情は変わってくる。

※続きは2018年9月号本誌にて。
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