座標軸 2018.04

向野幾世 奈良大学元講師

花のご縁

 咲き満ちて こぼるる花もなかりけり 高浜虚子

 書斎のガラス戸いっぱいに満開の桜が広がっている。狭い庭の一角を築山にして、そこに桜の木が一本。樹齢はわずか50年余とはいえ、実に伸び伸びとかつ堂々としている。
 庭木の中で樹齢がわかるのは唯一この桜だけ。というのは息子の小学校入学を記念して保育園同級生のお父さんが、自分宅とわが家にお揃いの苗木を植えてくださったからだ。当時は1メートルに満たないひょろりとした苗木で、後にそれはソメイヨシノと分かった。今は優に2階の屋根にとどく大木となった。
 何とこの桜の花のご縁が思わぬ展開になろうとは。
 この年のはじめ、ひさしく音信も絶えていた桜の木の贈り主から電話があり、息子の保育園時代の父母たちの集まりをしたい、ついてはその呼びかけ人になってほしいという。「今さら」と思いもするが、電話の主は「今だから」「いや今しか」と言いつのる。
 
※続きは2018年4月号本誌にて。
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