座標軸 2017.09

向野幾世 奈良大学元講師

よく生き、よく老いる

 朝の家事が一段落、テレビの前に座るやいきなり、「聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さん、けさ6時33分、呼吸不全のため死去。105歳」の一報。驚きと共にするすると一年前の記憶がよみがえって来た。
 それは本当はお断りしたかった、「元気に百歳」クラブ関西の代表になる羽目になり、その運動の提唱者が日野原先生と知り、必死な思いで神戸文化会館の講演会に出かけた日のこと。本でもCDでも存じ上げてはいたが、追い込まれた気持ちのまま会場の最前列に座し、一挙手一投足をも心と目に刻みつけたかった。
 あの日の先生は舞台袖までは車椅子でお出でになったが、紹介が終わるや車椅子から立ち上がり、ご自身でマイクの前に立たれた。手に杖を持っていらしたが、一度もお使いにならなかった。
 アメリカで心臓内科の医師である長男さんから「パパ、無理しないで」という言葉に応えての杖であったろうか。けれども開口一番、「私の声はよく聞こえますか」。続けて「皆さん、いのちが何故与えられたかを考えたことがありますか」と、まるで私に発せられた問いかとまがう心で息が苦しくなった──。

※続きは2017年9月号本誌にて。
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