座標軸 2017.05

向野幾世 奈良大学元講師

汗水流して仕事したい

 子の髪の風に流るる五月来ぬ
          大野林火

 五月という言葉のひびきがうれしい。庭の木蓮の新緑が光をいっぱいに受けて、部屋中が緑色になる。すべての生命がよろこぶ季節である。
 4歳の孫が食後、背丈を計ってくれとせがむ。毎日のことなのだが、「びっくりしたなぁ、毎日大きくなるんやね」と仮の印を柱につけていく。柱の傷は気のせいか、だんだん伸びている。
 先日、「みやざき中央新聞」の中に心に残る話が載っていた。
 ──老いた母親を有料老人ホームに入所させたある女性。面会に行くと母親の爪が伸びていた。自分で切ってもよかったのだが、ホームが気付いてくれることを期待して何も言わずに帰った。数日後、面会に行くとさらに爪が伸びていた。次の面会も。次も。
 女性は根負けして職員に爪切りを借りた。職員はニコニコしながら貸してくれた。その笑顔が女性をさらに悲しくさせた。「入所者の爪が伸びていることに気付かない」。後日、女性は母親を別のホームに移した…。
 

※続きは2017年5月号本誌にて。
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