座標軸 2016.02

 向野幾世 奈良大学元講師

いのちかけて青める草

 如月、土のなかから季節は移っていくらしい。
 日射しに誘われて外に出たら、石垣の隙間から小さな草が芽を出している。目をこらすと畦道は草青んでいる。

 いのちかけて 青める草と 思ひけり 山口いさを

 そういえば、1歳の孫がヨチヨチをしている。「這えば立て、立てば歩めの親心」という。祖母なれば、急く気持ちより、ゆっくり愛でる心でその日を待っている。首がすわり、寝がえりをしたのを喜ぶ間に、お座り、はいはい、四つ這い、つかまり立ち、つかまり歩きと細やかな順序を踏んで人は人間になっていく。
 なかでも一人歩きの瞬間は赤ん坊にとっても一大転機のことなのか。今年3歳になる孫が歩きはじめた日のことをいまも鮮やかに思い出す。降り積もった雪が真っ白な絨毯に見えた日。南国生まれの私は興奮をおさえられず、赤ん坊を連れだし真っ白な雪の上に立たせた。
 幼な子も胸がさわぐのか、オロオロと一人立ち、そしてあれよあれよの間に一歩足を踏み出した。が、一瞬のこと、幼な子は尻もちをつき、はげしく声をたてて笑った。いのちがけの一歩だったのだろう。
 
※続きは2016年2月号本誌にて。
readlink

関連記事

カテゴリー

ページ上部へ戻る