座標軸 2015.05

向野幾世 元奈良大学講師

見えぬけれどもあるんだよ

 だれの言葉だったか、人間は生まれて来るとき、一通の封書を持ってくるという。それを見て生きる人と見ないまま生きる人がいる――つまり一生の設計図があるらしい。困難に出合ってもそれが封書の中の一行ならば恨みっこなしで自らをコントロールすることもできよう、辟易しないでやりぬくことも。

 青いお空の底ふかく、
 海の小石のそのように、
 夜がくるまで沈んでる、
 昼のお星は眼にみえぬ。
 見えぬけれどもあるんだよ、
 見えぬものでもあるんだよ。
〈金子みすゞ「星とたんぽぽ」より〉

 わが家族は今年、人生の節目。大仰な言い方だが、民族の大移動ならぬ家族の大移動だ。長男一家4人が奈良に来る。次男一家は東京転居、孫娘は奈良の大学に来る。リハーサルなしの入試は、一回限りの人生を教えてくれた。奈良の地で迎える私は三世代二世帯暮らしに備え、家の増改築を行なった。
 それぞれ自分の人生は自分持ち。変えなければならない事態は受け入れるほかない。受け入れるエネルギーは叡智に変えねばならない。そのとき、困難は感謝に変わる。家の改築に伴う身辺の整理で生活スタイルも変わる。大きなエネルギーを要するとき、健康と元気が私に残されていたことに感謝している。・・・

※続きは2015年5月号にて。
readlink

関連記事

カテゴリー

ページ上部へ戻る